(以下桐生のぼる著書「なぜ、下級生は廊下を直角に歩くのか?」より)
みなさんが宝塚の舞台を真似するとき、必ず登場するのがフィナーレで手に持って
いるブーケのような小道具です。
これに正式名称は無く、私たちは「シャンシャン」と呼んでいました。
いろいろなデザインがあり、板の上に飾りを貼り付けてあるものや花束のような形
のもの、燭台に似たものなどデザインはさまざまです。
(写真はPETIPA制作の「お花のブーケ型シャンシャン」です。)
ただ出演者にしてみれば、なるべく軽い方がありがたいというのが本音でした。
というのも、客席から見て全員が並んだとき、手に持っている「シャンシャン」が
豪華であれば舞台全体がとても華やかになるので、公演ごとにデザインに力が入り、
時にはかなり大きくなったり重くなったりするからです。
特にフィナーレで、全員が舞台上に出そろって、いよいよトップスターが大階段の
真ん中に登場する場面で、手に持っている「シャンシャン」をトップスターに向けて
大きく差し出しお迎えをするときが大変なのです。「シャンシャン」を持っている方の
手を頭の高さくらいに上げて、トップスターが歌い、ゆっくり階段を下りるまでの間、
ずっと掲げているのですから。
特に『ベルばら』のときの「シャンシャン」は花のブーケの中に燭台があり、その
ろうそくの先が豆電球になっていて明るくともるデザインでした。手で持っている軸
の部分に単一電池が二個入っていたのです。その重みもプラスされかなりの重さでし
た。
出演者はニコニコと平気な顔をしていますが、舞台にはなかなか地味に大変なこと
もあるのです。