(以下桐生のぼる著書「なぜ、下級生は廊下を直角に歩くのか?」より)

娘役の美しさはどこ?

と聞かれたら、私は迷わず「背中」と答えます。
娘役に必要なのは「情感」「情緒」です。
ちょっとした仕草の優しさ、美しさ、可愛さ、可憐さなど、
娘役の「情感」によって男役はより格好良く、凛々しく見えるのです。
 

(写真は桐生の個人アルバムより)

大劇場の隅々まで情感を伝える

男役は格好良さ、娘役は情感・情緒。
男役は「男役十年」といわれるほど研究をして、格好良さを身につけていきます。
では、娘役はどこでその情感や情緒を表現すればいいのでしょうか。
セリフで伝えることはもちろんですが、セリフの無い役やダンスのみの場面もあります。
二千人以上も入る大劇場の二階の隅々までその情感を伝えるにはどうしたらいいのでしょう。
からだの胸の部分、つまり上半身を上手に使って表現するのです。
背中は手足のように自由に動かせる部分ではないので、「肩甲骨」をよく動くようにトレーニングすることで、
大きく反らせたり丸くしたりして情感を表現します。一口に肩甲骨を動かすといってもなかなか大変です。
宝塚では、クラシックバレエをはじめ、ジャズダンス、モダンダンス、スパニッシュ
などさまざまなレッスンを受けて、からだの隅々まで自由に動かすことができるように訓練します。
そうすることで娘役の命ともいわれる「背中」に意識がいき、
肩甲骨を動かすことによって胸から上、首にかけて「情緒」を醸し出せるようになっていくのです。
加えて背中の反対側の胸筋もレッスンでしっかり鍛えると、さらに上半身がよく動くようになります。
よく動く上半身に首を連動させることであらゆる動きができるようになるのです。
ここまでがんばらないと微妙なニュアンスまで表現できないのです。
 
宝塚にはうっとりするようなラブシーンやデュエットのダンスがありますが、
男役の格好良さと娘役の情感が調和してこそ素晴らしい場面になるのです。
美しい容姿を保つためには厳しいトレーニングと日々の努力が必要になります。
私が男役から娘役に転向したときに、約二カ月くらいは背中と腰が痛くてたまらない日々を過ごしました。
男役よりもはるかに上半身のキープ力が必要なのですから。
しかし娘役になってある程度したころに下級生から「私はまゆみさんのような背中で表現できる娘役に憧れています!
そんな娘役になりたいんです!」といわれたことがありました。
娘役の命は「背中」と信じて精進していた私にとって本当にうれしいことでした。

宝塚あるあるの一覧です。

ご覧になりたいところから読んでくださいね。
https://petipa.jp/category/aruaru/