宝塚時代の経験を活かして
講演活動に力を入れている私ですが、講演の時聴講者の方が特に興味を持たれて喜ばれるのが
「宝塚あるある・・・からヒントを得て生活に活かすこと。」です。
よくどんなことを話していただけるのですか?と聞かれることも多く・・・とても一言では言い切れませんので、私の著書「なぜ、下級生は廊下を直角に歩くのか?」から1エピソードずつご紹介していこうと思います。
これはビジネス書として、女性の方は勿論、職場やお付き合いの中での女性への対応などで困られている男性の方にはとても好評です。
楽しい講演内容をお探しの方や何気なくこのホームページに立ち寄られた方も、ちょっと一息読んでいただけたら、と思います。
でははじめて参りましょう!
「タカラヅ100年の「あるある」に学ぶ組織論
「なぜ、下級生は廊下を直角に歩くのか?」より
はじめに
こんにちは。元宝塚歌劇団星組の桐生のぼるです。
宝塚歌劇団は、大正三年(一九一四年)に宝塚少女歌劇の第一回公演が開始されて
から、平成二六年(二〇一四年)で一〇〇周年を迎えます。
私が在籍した一九七一年~八三年の十二年間は、宝塚歌劇団史上最大のヒット作『ベ
ルサイユのばら』(一九七四年初演)が誕生し、鳳蘭、安奈淳、榛名由梨というトップ
スターが光輝く、まさに黄金期といわれる時代でした。
その中にあって、私も代役公演『ベルサイユのばら』のオスカル役で「特別賞」を
受けた後、娘役に転向。関西テレビ『ラブパック』の準主役・夜叉姫を演じるなどし
て、『オルフェウスの窓』のアルラウネ役を最後に退団しました。宝塚黄金期とともに
駆け抜けることができた幸運を感じています。
現在私は、(株)PETIPAの代表として、研修・講演活動などで経営者のみなさ
んや幼稚園・保育園の園長先生にお話をする機会が多いのですが、私が宝塚歌劇団出
身ということもあり、必ず聞かれる質問があります。
「本当に下級生は廊下を直角に歩くのですか?」
「トップスターでも舞台以外は年功序列って本当ですか?」
いわゆる歌劇団特有のエピソードです。
私は正直にお答えします。
「本当ですよ」
すると多くの人が「え、まさか」と驚きます。
虚構だと思っている人も多いようですが、テレビ番組や雑誌などでおもしろおかし
く誇張されてはいるものの、伝えられているエピソードは事実であることが多いんで
す。
「しかし」
と、さらに話を続けます。
すると、相手も身を乗り出してきますね。
そこで、こうお伝えします。
「もちろん、理由があるんですよ」
宝塚は女性だけの劇団として多くの人に夢を与え続けて一〇〇年。
歌劇団のエピソードは、宝塚のブランドを支えてきた数々の理由の一つであること
は間違いないと信じています。
「宝塚はなぜ○○○○なのか」
「その理由は、△△△△だからです」
これらの理由には、組織の維持やブランド力向上に悩む多くのみなさんにとって、
役立つヒントがいっぱい詰まっています。
男役はなぜ、あれほど格好良いのか
世界でただ一つ、女性ばかりの劇団、宝塚歌劇団。
そこには「男役」が存在し、「男役」に寄り添う美しい「娘役」がいます。
この「男役」と「娘役」という存在が宝塚の魅力でもあります。
なぜ、男役はあれほど格好が良いのでしょうか。
それを演じるには、並々ならぬ努力があったのです。
(この写真は私の個人的なアルバムから・・・「ベルサイユのばら」のオスカルです。)
女性が演じる理想の男性。それこそ「男役」
宝塚ファンの中には、男役を「理想の男性以上の存在」と感じているという人も多
いですね。
私は小学校五年生で宝塚の舞台を見た瞬間に心を奪われ、中学卒業と同時に宝塚音
楽学校に入学したものですから、当時は「理想の男性」とまでは行き着きませんでし
たが、ファンのときも、入団してからも、とにかく「男役は格好良い!」の一言でし
た。
私は約十二年間の劇団生活の中で八年目から男役から娘役に転向し、ぜいたくにも
男役と娘役の両方を経験しました。この経験から「男役」「娘役」についてお伝えしま
しょう。
女性が男性を演じるのですから、そこには相当な努力が必要になってきます。
もちろん憧れて入団したのですから努力することは当たり前のことで、むしろ楽し
く自分の夢に向って一歩ずつ近づいていくのです。
生活のすべてを「男役」「娘役」に捧げる
劇団では「男役十年」といわれます。「桃栗三年柿八年」ではないですが、宝塚の男
役を演じられるようになるにはそれくらいかかるということです。
初舞台を踏み、一年が過ぎると各組に配属され、ようやく役らしい役がつきはじめ
ますが、作品によっては下級生は男役にも娘役にもなることがあります。新人公演で
一言のセリフをもらったりしながら、少しずつ役付きになっていきますが、「普段は普
通の女の子のような生活をしながら稽古場に入るとすぐに男役になれる」、そんな器用
なことができるわけがありません。日常の生活から男役はパンツスタイル、娘役はス
カートやワンピーススタイルと、それぞれのムードをきちんと保った服装や持ち物で
生活をします。
稽古着も同じです。稽古場から男役は「格好良い!」、娘役は「綺麗! かわいい!」
といわれるような服装を心掛けています。
ですから、ほとんどの男役が私服でもスカートを持っていないのです。
娘役に転向したてのころの私は、スカートを一着も持っていなくて困りました。普
段着も稽古着もすっかり娘役仕様に変更するのはすごく大変だったことを思い出しま
す。
タイトスカートをはいて一歩踏みだしたとたん「バリッ!」とスカートが破れたこ
とがありました。一歩が大き過ぎたのですね。普段から男役の歩き方をしていました
ので……。自分でも苦笑いでした。
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初回は長かったのにここまで読んでくださってありがとうございます。
これからも1エピソードずつアップしていきますのでまた読んでくださいね!!